そして今日も日中は

昨日の更新でも触れていた通り、心身を休めるというコトで家でダラダラと過ごしていたワケですが。でもまぁ、相変わらず休日の更新が (休日の更新“も”?)「何もせずダラダラしてました」 だけでは物足りないってコトで、久し振りに書評でも書いてみようかと思ったり。
ってコトで、以下本日の書評なんですが。今回は、既に本自体はちょっと前には読み終えていたんですが、内容的に非常にオススメなので書評付きで紹介しようとストックしていた(汗)本の中から、米澤穂信氏の作品で、「氷菓」 と 「愚者のエンドロール」 を取り上げてみたいと思いまっす。

真の省エネとは自らの色すらも判別せぬことでは無きか

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

さてさて、本日取り上げるこの2作の作品についてなんですが。実はこの2作をまとめて取り上げたのにはワケがあるというか、まぁぶっちゃけたことを言ってしまえば、この2作はシリーズものの作品なんですよ、ハイ。
んでもって、この作品の粗筋につきましては、まぁ大体こんな感じでして↓

自らが入学した高校の先輩に当たる彼の姉からの手紙により、自らのモットーを “省エネ” とする高校生・折木奉太郎は、先輩部員が誰もいない潰れかかった部活・古典部に入部することになるが、そこで彼は、「私気になります」 の一言で何にでも首を突っ込んで行くお嬢様・千反田えると出会うこととなる。
本人の投げ遣り的な思惑とは裏腹に、彼女の好奇心に導かれるままに、校内に潜む小さな謎達を次々と解かされていく奉太郎。そうして数々の謎を解きを進めている内に、奉太郎は遂に、千反田えるの伯父が関わっていたという、古典部が毎年作成している文集『氷菓』に秘められた、あるほろ苦い思い出の謎に迫ることとなるのだが……。

……というのが、この <古典部シリーズ> の第一作目にあたる 「氷菓」 の粗筋なんですが。んー……まぁ作品分類的には、青春小説+ミステリ小説、ってなカンジになるんでしょうか。ミステリと呼ぶには、やや小粒すぎるような謎が多過ぎる気がしますし、青春小説と言い切ってしまうには、ミステリの要素が幅を利かせ過ぎている……みたいな? や、まぁ面白ければそんな分類なんざどうでもイイんですけどね(苦笑)。
えーと、まぁ読後の感想としては、非常に面白い作品であることに間違いは無いですよ、ハイ。もっとも、「氷菓」 も 「愚者のエンドロール」 も、ややボリューム感には欠けるというか、折角のほろ苦くも甘酸っぱい感じのある良質な青春小説的文章 & 決してアクロバティックでは無いものの読んでいて素直に楽しめる感じのミステリ要素が盛り込まれた作品ということで、個人的にはもうちょっと長くこの作品世界を楽しみたかったかなー……とかいう思いも正直ありましたが。
まぁ作品のボリュームに対する個人的な感想はさておいて。また、あるいはこれは、元々はこの作品は角川スニーカーのレーベル・ライトノベルスのレーベルで出ていたというのも関係しているのかも知れませんが、先程この作品には青春小説的な要素があるということを書いたかと思うんですが、恐らくその手の作品には必要不可欠であろうと思われる、それぞれの登場人物のキャラ立ちがしっかりしているっていうのは、かなり高ポイントな部分だったりします。
先に述べた、自らのスタイルを “省エネ” とする主人公・折木奉太郎と、そんな彼の牽引役を勤める好奇心少女・千反田えるは勿論の事、徹底した趣味人的な部分とそれ以上に人間臭い部分を時折垣間見せる奉太郎の友人・福部里志に、童顔の容貌に毒舌を隠し持った少女・伊原摩耶花と、その脇を固める面々もまた実に個性豊かというか、キャラ立ちがしっかりしてまして。
只管に事件の謎を追って行くだけの、ただ単純に謎を解くという行為に特化したミステリ作品なら、登場人物のキャラ立ちなんていうものは大して気にならないかも知れませんが、青春小説風味に限らず、そこに人間関係の部分や人の心の機微なんていうものを加える場合には、やっぱりこういうキャラ立ちってのは重要になって来ると個人的には思いますし、それがキッチリ成されているという点でも、個人的にはこの作品は非常に面白い・楽しめる仕上がりとなっていましたよ、ハイ。
……まぁその一方で、仮にも主人公とヒロイン(?)の名前が、ちと現実離れし過ぎているっつーのはどうなのよ、とか思ったりもしましたけどね(苦笑)。もっとも、これでもまだ清涼院流水氏の作品とかに比べれば、十分に常識の範囲内かも知れませんが(^^;


まぁ何はともあれ、とりあえず総論と致しましては、謎解き特化型のミステリとか、もしくはボリュームたっぷりで描かれる青春劇とかがツボだという人にとっては、その辺りがどちらも中途半端とも言える形に仕上がっているこの作品では物足りなく感じるかも知れませんが、でもその一方で、殺人がどうとかアリバイがどうとかいった、あまりにも堅苦しい・陰惨な雰囲気のミステリにはもううんざりしているといった人にとっては、この程好い感じの軽い謎解きと青春小説的な読後のほろ苦さと言うのは、かなり楽しめる仕上がりになっているのではないでしょうか。
また、今回はシリーズ第1作目である 「氷菓」 の粗筋紹介しかしませんでしたが、それに続く第2作目の 「愚者のエンドロール」 も雰囲気的には同じで非常に良い感じの作品ですので、「氷菓」 が面白いと感じた人は、こちらも買って損はないかと思いますよー。
……そしてこのシリーズなんですが、今回は紹介から外してしまいましたが、実は何気に、「氷菓」 と 「愚者のエンドロール」 に続く第3作目として、「クドリャフカの順番」 なる作品も発売されてたりするんですよねー。
なお、何故今回その第3作目を紹介に含めなかったかと言うと、こちらはまた文庫になっていないので、(主に値段の面で) 同列の扱いで紹介するのは何となくイヤだったという理由と共に、出来自体はこれまた非常に良い、というか個人的には今回紹介した前2作よりも更に良い出来だと思うので、これはこれでそのうち折を見て単独で取り上げよう……とか思っているからだったりして(^^;
っつーコトで、この 「クドリャフカの順番」 についてはまた後日改めて紹介しようと思いますが、とりあえずは、それに繋がる作品ということで、この <古典部シリーズ> の第1作と第2作目を紹介してみました、ってコトでー。


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