先週は飲み会でサボってしまいましたが

繰り返し言っているように、そろそろ本腰を入れてかからないと、「100冊読書クラブ」 の目標がキビシイよなぁ……というコトで。ネタ不足の穴埋めも兼ねて(汗)、今日はまた書評を書いてみようと思います。
そして今日取り上げる作品はコチラ、新進気鋭のラノベ作家である有川浩先生の最新作、「図書館戦争」 でっす。図書館戦争

図書館よ、全ての出版物の砦となれ

公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる」 ことを目的に、あらゆるメディア・作品に検閲を掛け、その内容に少しでも問題があれば、該当のメディアを没収及び処分することが出来るという悪法 「メディア良化法」 が成立・施行された、やや近未来の現実に良く似た社会。
そんな社会において、“図書館” は、ただ無料で本を利用者に提供するという役割を持つのみでなく、メディア良化法に基づく過剰な検閲を武力までをも用いて実施しようとする 「良化部隊」 に対し、自らもまた武力・軍隊を持つことで、図書館の自由を守るという、いわば精神的にも物理的にも、メディアの自由を守る最後の砦となっていた……。

……というのが、この作品の基本設定と言うか世界観となっておりまして。で、この軍隊としての顔すら持ち合わせている図書館に就職し、その身体能力の高さと本人の希望により、裏方の司書業務ではなく、男性に交じって武力を以って図書館の自由を守る活動をメインで行うこととなった女性・笠原郁を主人公とし、彼女の活躍ぶりを描くことで物語は展開して行くんですが。
いやー……ハッキリ言って、読み出した直後の最初の感想は、「(表紙の絵のポップさに) 裏切られたーっ!」 みたいな感じだったんですけどねー(苦笑)。というのは、一応は事前に 「図書館 vs 法に基づく規制団体」 の戦いがメインストーリーである、という話は聞いていたものの、表紙の絵の阿呆っぽさ(失礼)からして、まさかここまで真面目と言うかシリアスというか、結構本格的に戦争をメインの要素の一つに据えているとは思って無かったんですよ。
ところが、いざ実際に読み始めてみれば、確かに恋愛やら青春的な自己成長の悩みやらといった要素は多分に盛り込まれているものの、やはり一番のメイン要素・作品全体の雰囲気は “戦争モノ” って感じに仕上がってまして。いやはや、繰り返しになってしまいますが、表紙や帯の雰囲気では、たとえ戦争という要素が入っていたとしても、全体の雰囲気としては、もうちょっと軽い感じのを期待していたんですけどねー、個人的には。
えーと……何と言いますか、ゲーム好きな人に分かり易く言うのであれば、「サクラ大戦」 的なノリを期待して買ったら、実際には 「ガンパレードマーチ」 だった……みたいな?(笑) や、まぁ私はどっちも未プレイで、この2作品の違いやら傾向やらもネットで齧っただけなので、実際のところは良く分かりませんが(^^;


……などと、全ては自分の勝手な思い込み(苦笑)であったにも関わらず、何だか一方的に作品にケチを付ける様な文章を書いて参りましたが。じゃあ、この作品が自分にとって面白くなかったのか、と言いますと……いやー、実に面白かったんですよねー、これがまた(笑)。
「戦争」 的なものをメインに話が進むということで、戦記物っぽい話が一切ダメという人には厳しいかも知れませんが、とは言っても実際に戦いを行っている様子が描かれたりしているのはごく一部だけで、大半は、軍事訓練やら兵隊さん的な普段の生活やらの描写が中心になっているので、程好く “戦争モノ” のテイストは味わえるにも関わらず、展開が過剰に血生臭かったり軍紀バリバリの表現ばっかり……みたいなコトは無かったというのも、個人的にはかなりの高ポイントでして。
また、ストーリーの展開等に関しても、意外性こそ乏しいものの、メインとなる登場人物達が (これまたややステレオタイプ的な感はあるものの) 非常にキャラが立っているので、そのキャラの持ち味で十分カバーは行えている感じで。そーいう意味では、軍隊を扱った作品やら戦記物やらにはありがちなように、とにかくやたらぞろぞろと上司やら部下やらが大勢登場するのではなく、メインの登場人物は最小限に絞り込まれているっていうのも、軍隊というテイストが入っているにも関わらず、この作品が読み易い一品に仕上がっている理由の一つなのかも知れないですねー。


まぁそんなこんなで、全体の感想としては、これは褒めているのか貶しているのか微妙に思われてしまう表現かも知れませんが、図書館による軍隊 vs メディア規制を目指す軍隊という構図の妙・面白さを除けば、全体的には、「何処かで読んだことのあるような、けれどもやっぱり読むと面白い」 的な感じに仕上がっている、というのが、率直な私の感想でしょうか。
目新しさとか、とにかく一風変わったストーリー展開やらってのを求める人にとってはやや不満が残ったりするかも知れませんが、そうではなく、安定した面白さってのを求める人にはかなりオススメ出来る作品と言えるのではないでしょうか。そーいう意味では、筆者の有川先生が後書きで言っている、「今回のコンセプトは月9連ドラ風」 ってのは正しいのかも知れませんねー。
また、扱っているテーマがテーマだけに、本を愛していたり、あるいはメディアの規制ってヤツに危機感などを感じたりしている人にも、結構オススメ出来るかも知れないんですが……えーと、まぁ流石にそこまで極端な人ってのはあまり居ないとは思うんですが、確かに 「図書館の自由に関する宣言」 ってのは 現実に行われている宣言 ではありますが、だからと言って、この作品の展開とかを真面目に受け取って、本気でいきなり武力までをも用いてメディア規制に対抗しようとしたりするのは止めて下さいねー(汗)。
流石に、実際にメディア規制が行われたりして、その折に本当に武力同士の衝突なんぞでも起きた際に、「この本が図書館の利用に関して過剰に自由さを謳ってアジテーションしたんだ!」 みたいなコトになったのでは目も当てられないので……。そういう意味では、実はこの本って意外と対象年齢高めなのかなぁ、とも思ったり。まぁ、所詮は杞憂的な戯言ですけどね。




あと最後に、現在仕事として会社の経理的なものに携わっている身としては、P.324の最後の行からの、一連の 「無理を通せば道理が引っ込む」 的なとあるやり取りは非常に面白かったなぁ、とか言ってみたり(笑)。現実もこれくらいフレキシブルだと、色々と仕事が楽なんですけどねー……。なお、私が何を言ってるかについて詳しくは、まだこの作品を未読の方は、実際にこの本をお読みになって、自分の目で確かめてみて下さいな、ハイ(^^;


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