そして週末ってコトで

色々と出歩いたりはしていたものの、それでも移動の電車の車内とかで本を読む程度の余裕はありましたよー、というコトで。
あと、これから2〜3月にかけては、年度末ってコトで仕事が多忙になりそう = 読書の余裕が更に減ると予想されるにも関わらず、これ以上ペースを落とすと、1年間で100冊読書 (というか今の自分の場合は “書評” ですけど) という、クラブ員としての自己目標の達成がかなり危ういという事情なんぞもあったりする(汗)ので、あんまり気力やら体力やらが余ってるワケではないものの、それでも週末と言うことで平日よりは時間的余裕があるというコトで、今日はまた書評の更新でもしておこうかと思いまして(苦笑)。
っつーコトで、本日の書評ではコチラ、これがデビュー作となるという、十月ユウ先生の作品で、「その本、持ち出しを禁ず」 を取り上げてみたいと思いまっす (……いや、実は自分でも、「ここ最近、ラノベとか漫画じゃない本をほとんど読んで無いなー。たまには、もうちょっとはマジメっぽい本とかも読みたい・取り上げたいなー」 とは思ってるんですけどね。ただ、どーにもそういった読み応えのある本に手を出す気力ってのが現在かなり減退してまして……/汗)。その本、持ち出しを禁ず―戒書封殺記 (富士見ファンタジア文庫)


その知を求める者、己が身の果てを知らぬや

巨大な図書館を持つ、永命学園高校。そこで図書部の部長を務め、そして本を粗末に扱う者に対する苛烈な行動等により全校生徒から一目を置かれている人物、彼こそが月詠読破である。
だが、彼にはこの高校の図書部部長とは異なるもう一つの顔、いわゆる禁書を集めるという任務があった。そして、この永命学園高校に入学して間もない女子生徒・楠本綴がふとしたきっかけで彼と知り合ったことを契機として、彼女もまたこの禁書を巡る戦いに巻き込まれることとなる……。

……というのが、まぁ大雑把な最初の粗筋なワケなんですが。
えー……まぁ、わざわざ読んでおいて & ここで書評として取り上げておいてアレなんですが。ぶっちゃけた話、確かに世界設定・主人公の立場の設定は結構面白いものの、ただ独自性がどうかと聞かれると、正直どーかなー……って思える作品であるように思えましたねー。
というのは、「図書館とか禁書 (もしくは稀少本) に携わる活動が任務」 という設定って、確かに読書好きとして少なからず心惹かれる(苦笑)ものがあるものの、しかしその一方では、一昔前の作品である 「R.O.D」 とかを引き合いに出すまでもなく、結構モチーフ的にはありふれてるよなー、とか思ってしまったもので(汗)。
もっとも、私がこんな感想を抱くのは、自分がボチボチに齢を食ってる = こういったラノベの本来のターゲット層である中高生とかよりも、それなりには数多くの物語ってヤツを読んだり見たり聞いたりしているので、つい他の似た作品の存在を思い出してしまう……ってのも大きな要因・原因だろうとは思うんですけどね。
また、以下やや辛口な物言いになってしまいますが、ではこういった設定関連ではなく文章そのものについてはどうかと聞かれれば、まだこれがデビュー作ということで、あまりこういったラノベ作品では見られないような表現やら言い回しやらが使われている点にはそれなりの面白さや妙はあるものの、文章全体を通じての読み易さや興味深さという点ではまだまだ発展途上であるように思えた、ってのが実際のところだったりして。


……では、何故にわざわざ、それだけ不満も感じるような作品をここで取り上げているかと申しますと。実はこの作品 (というか作者の十月先生か) 、キャラの作り方ってのが、ややあざと過ぎる(苦笑)感はあるものの、実にラノベ的というか、「キャラが立っている」 という点においては、かなり見事な感じに描かれてましてねー。
まず主人公である月詠読破 (って、凄いネーミングよねー、この名前も) からして、フチ無し眼鏡を掛けた常にクールな美形で尚且つそれなりにアクションも出来るという、クールビューティー系のメガネ男子好きな女の子ならかなりの高確率でツボだろう、という仕上がりになってる始末で(笑)。更に、メインヒロインである楠本綴についても、眼鏡のドジっ娘で、顔も “自分では気付いていない” が実はそれなりに魅力的という、これまた正に一部の眼鏡っ娘好きにはツボだろーなー、という感じでして(^^;
他にも、年上なのに頼りない図書館司書や生真面目で純情な図書部の女子副部長、あるいは、禁書回収を月詠に命じるやや天然系の好青年な上司などなど、男女を問わず “萌え” を狙ってるなー、ってカンジが全体から出ていて、そしてそれを踏まえた上で読むと、ある意味ここ最近の 「売れ筋」 ってのが見えて来るよーな気がするのが実に愉快で (や、流石に自分でも、こんな読み方はちと悪趣味かとは思いますけどね/汗)。
普段からラノベとかをそれなりに読んでる人間としては、そういった最近の 「売れ筋」 の傾向ってヤツを総括する、もっと言ってしまえば、あとがきや解説を読む限りでは、この作者に対しては編集部が結構な指導・指南を行っているらしいので、今編集やら出版やらを生み出す側はどんな作品を求めている、あるいは売れると考えているのかを知るという点においては、この作品はなかなかに参考になると思えましたねー。……もっとも、「売れ筋」 ってのは水物・日々変化してしまうものなので、この作品のそういう傾向だって永遠普遍ってワケじゃあ無いですけどね。


……などと、何だか今日はいつもにも増して捻くれ気味の書評 (特に後半) となってしまいましたが。
まぁ、こういったキャラ立ちやら “萌え” やらといった要素を抜きにしても、作品に独自性・目新さってヤツを極度に求めないのであれば、適度にミステリっぽいスパイスなんぞも全体に効いていて、ファンタジーを読むということに抵抗が無いのであれば、読書という行為、もしくはミステリ小説とかが好きな人ならば、ラノベを読む習慣の有無に関わらず楽しめるであろうと思われるのは間違いない作品であるというのも事実でして。
何はともあれ、ただ単純にこの設定に惹かれて読んでみるも良し、最近の売れ筋やら萌えやらを知る上で読んでみるも良し、あるいは、この作者が今後どう化けるかを見る為にまずはデビュー作を押さえておくも良し、とにかく様々な読み方が楽しめるであろうこの作品。ちょっとでも興味を持ったならば、読んでおいて損は無いと思いますよー。




……ところで、これはただ単に私の引き出しが少ない(汗)からかも知れませんが……これで、主人公が関与してくる禁書の内容っつーのが 「旧支配者」 やら 「外なる神」 についての記述だったり、あるいは本のタイトルがまんま 「ネクロノミコン」 だったら、立派なクトゥルフクトゥルー) 神話だよなー、とか思ったり(笑)。
や、どーにもここ最近、自分の中でクトゥルフ神話に対する熱ってヤツが発生してましてねー。現在、何でもかんでもそっちの方向に結び付けたがる傾向があるみたいで……。
あー、でもどーせだったら、もしこの作品をシリーズで展開していくのであれば、ホントに一度はそっち絡みの話とかってのをやってくれないものですかねぇ? ……まぁ、だからと言って、“萌え” やキャラ立ちを強く主張するあまり、邪神たちをあまりにも矮小に描き過ぎたりされると、今度は一気に興醒めになりそうな気もしますけどね(^^;


→ 合計:078冊(小説34冊 / 漫画32冊 / その他12冊)