で、まぁ愚痴ってばかりなのも何なので

ここ最近はあまり大した本は読んで無いんですが、それでもまぁ一応は読書は続けているし、それに何より、先月丸々サボっている以上、またボチボチ書かないと 「年間100冊」 の目標を達成するのが本気で難しくなる気がする(汗)ので、一応書評なんぞでもまた書いてみようかと思います(^^;
……ってコトで。本日の書評はコチラ、私の中でかなり上位を占める好きな作家・上遠野浩平氏の最新作、「メモリアノイズの流転現象」 を取り上げてみたいと思いまっす。メモリアノイズの流転現象 (ノン・ノベル)

人は自らの声すらマトモに聞けちゃあいない……みたいな

さてさて、この 「メモリアノイズの流転現象」 についてなんですが、今回この作品についての書評を書くに当たって、1つだけ最初にお断りを入れておくべきことがありまして。実はこの作品って、これ単品だけでの作品ではなく、以前にこのblogでも取り上げたことのあるソウルドロップの幽体研究」 の続きに当たる作品なんですよねー。
なので、一応はこの作品だけでも楽しく読むことは出来るかと思うのですが、より楽しく読む・味わう為には、この前作にあたる作品を読んでからの方が良いですよ、と。……まぁそれだけの話ではあるのですが、書評・本の紹介という文章の特性上、一応最初に注意書きとして明記させて頂きました。


で、ここからが本題・実際の感想やら何やらになるんですが。
んー……まぁ、これはちょっと前に この作品を一読した時点での感想 でも書いたことなんですが、一言で言ってしまうのであれば、良くも悪くも上遠野氏らしい感じに仕上がってる作品だったように思えました。
この辺は他のシリーズの作品などにも共通なので、敢えて書くことではないのかも知れませんが、同じ事件を別の複数の人間の視点で描いたり、あるいは複数の出来事・事柄が相変わらず見事なカンジで。
あとは今回は、一種の“お遊び”なのか、いわゆる“名探偵モノ”にありがちな、関係者を一同に集めての 「実はこの事件の真相は……」 なーんてシーンもありましたが……んー、まぁ自分としては、別にこの作品を純粋なミステリとして読んでいるワケではないので、そこで明かされる事件の真相やらトリックやらがどんな類のものであろうと、あまり頓着はしないんだけど……ちぃっとばかり、ミステリとしては強引というか読者への情報提供不足ってなカンジのオチだったかなー、とか思ってしまったり。
まぁ、この辺は自分の作品を読む力とか、あるいはミステリにおける推理力みたいなものが不足してることによるケチ付け・いちゃもんかも知れないッスけどね(苦笑)。


あ、でも作品の途中で、読者を欺くような結構意図的な描写 (“それ”の詳しい説明やその手法を示す用語については、一応ネタバレ回避ってことでここでは敢えて言葉を濁させて頂きます) が為されていたことについては、ここ最近は講談社ノベルスや富士見ミステリーでミステリ系の作品を発表していることが良いカンジで影響を及ぼしているのか、従来の上遠野氏の作品スタイルに慣れきってしまっている自分にとってはなかなかに新鮮というか、かなり面白く思いましたねー。
まぁ、上遠野氏は以前からミステリ系の作品では結構お馴染みな手法をいくつも用いて作品を書いていることが多いかとは思っていたんですが、今回はそれが正にミステリとしての結構重要な部分に適用されていたと思えただけに、この描写のあたりについては、かなりミステリっぽい感じに仕上がってるように感じた次第で。
前述の通り、オチそのものはミステリとしては正直あとちょっとなカンジ、というかそもそもその推理による真相解明は別に作品そのもののオチとは微妙に違う(汗)だけに、この作品を“ミステリ作品”として期待して読むとちと拍子抜けしたりもするかも知れませんが、ミステリ風味の入った作品として読む分には、なかなか楽しく読めるのでは、ってカンジでしょうか。


えーと……まぁそんなこんなで、結局書評というワリにはあまり作品自体の紹介・推薦文章にはなっていないような気もしますが、とりあえず、上遠野氏の作品のファンには無条件にオススメ出来る作品、というコトで。そしてそれ以外の人は……あー、まぁとりあえずはこの作品の前作にあたる、「ソウルドロップの幽体研究 (ノン・ノベル)」 を読んでみてから、というのが良いのではないでしょうか。
……もっとも、その 「ソウルドロップの幽体研究」 を読んだだけでは、この作品が裏に隠している他のシリーズとの繋がりってヤツまでは把握しきれないってのも事実だったりするんですけどね(汗)。まぁこの他のシリーズとの繋がりについては、とりあえず少なくともこの作品に関しては、“知らなければ知らないで構いやしない”って程度のものだから、別に問題は無いかと思うんですが……。
それにしても、上遠野先生ー、ほぼ全ての作品の世界観を繋げるってのは、確かに私みたいなヘビーな読者にとっては、思わずニヤリと出来て楽しくはあるんですが、それでも、きくたけ氏の出すTRPGじゃないんだから、そこまでして全ての作品を繋げなくてもイイんじゃないでしょうかー、とか言ってみたり(^^;


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