ついでにもう一丁

ここ最近は、どーも平日は仕事が忙しかったりして、なかなか週末以外はじっくり書評を書くこともままならぬ状態が続いておりますが、まぁ今日は特に忙しい予定も無かったということで、平日に書けない分を合わせて、ついでにもう一本書評を書いてみようと思います。
ちなみに取り上げる本はコチラ、エリック・ガルシア氏の鉤爪シリーズの第3作にして最新刊、「鉤爪の収穫」 でっす。鉤爪の収穫 (ヴィレッジブックス)

昔の友人ってのはイイもんだ、自分に負い目さえ無ければな。

さてさて。前作から随分とブランクが開いたものの、ようやくお披露目となった、鉤爪シリーズの第3作目となるこの作品なワケですが……いやー、相変わらずの面白さですねー、このシリーズは。
それも今回は出だしからして、(まぁ、アメリカでの出版ペースとこちらでの翻訳 & 出版のペースは随分と違うのかも知れませんが) 実に久しぶりの作品ということで、第一声でのご挨拶・最初の一行では、久しぶりの再会を彩る何か気の利いた言葉でも聞けるのかと思えば、実際のところは、「やあやあ、ごぶさた」 と素っ気無い一言があるだけのドライっぷり(苦笑)。
まぁ、この普段の素っ気無さがあるからこそ、毎度毎度肝心なところで発揮される (あるいは“発揮されてしまう”) ルビオの人の良さ・浪花節っぷりが映えるんですけどね(^^;


とりあえず前フリはこれくらいにして、まずは今回のストーリーについてですが。
ようやくハーブ中毒からも脱却しつつあり、相棒のアーニーの死を乗り越え、何とか真っ当な探偵としての生活を取り戻しつつルビオ。しかし今回は、様々な事情から、これまで断固として避け続けて来たマフィアの依頼を受けることとなってしまう。
そして、その依頼をこなすうちに、ついにはマイアミへと足を運ぶことになってしまうのだが、そこには何と旧友のジャックとその妹のノリーンも居て……と、ある意味これまでの2作品と同様に、結局は事務所に落ち着いてはいられない、相変わらずの“非・安楽椅子探偵”っぷり。まぁ、ルビオが事務所でじっとなんかしていない・していられない性格なのは、最早毎度お馴染みのコトですけどね(苦笑)。


それにしても、今回はこのルビオの旧友であるジャックとノリーンがイイ味を出してますねー。まぁ、二人がどういう人間か……もとい、どういう恐竜か(笑)については、ネタバレに繋がってきてしまう部分もある為、あまり詳しくは書けないんですが、とにかく、良くも悪くも 「あぁ、成程確かにルビオの旧友っぽいなぁ」 と思わせる兄妹でして。
あとは、今回はこの旧友達が登場するということで、これまた如何にもなルビオの少年〜ティーンエイジ時代のエピソードが聞けるというのも、なかなかのポイントではないでしょうか。果たして、ルビオはどんな風な悪ガキだったのか(笑)、そして、そんな彼とジャックの少年時代の日々とはどんなものだったのか。
あるいは、こういった落ちぶれた探偵が主役を務めるような海外ハードボイルド作品を数多く読んでいる方にとっては、確かに恐竜というスパイスこそ加わっているものの、このルビオの過去もまたオーソドックスなものと思えてしまうかも知れませんが……まぁ、それはそれでイイじゃないですか、面白いんですから、とか言ってみたりして(^^;
とにかく、このシリーズを読んでいると、ついついルビオたちの恐竜ならではの行動や習慣ばかりに目が行きがちですが、今回の作品については、そういった所謂“恐竜らしさ”が以前の2作品に比べると結構控えめになっておりまして。
これまでの2作品のような、普通のハードボイルドとは二味くらい違った作品が読みたいという人にとっては、今回は少々物足りないカンジになっているかも知れませんが、その点を最重視するのでない限りは、これまで同様の非常に良質のハードボイルドに仕上がってる一冊だと言えるのではないでしょうか。


それと最後に、ネタバレにならない程度に今回の物語のラストについて触れておきますと。
んー……何て言うか、第1作目のオチがやや甘口で、第2作目のオチを (それが第1作目の当初の設定に繋がることを考えると) やや苦味のある味わいって考えると、今回のオチはそれよりももうちょっと苦いカンジの、何と言うかハーブティーというよりは苦いコーヒーって雰囲気のラストだったように思えましたねー。
とは言え、その辺は個々人で微妙な好み等もあるでしょうから、ここで一概に良し悪しを言うことは出来ないとは思うんですが……とりあえず個人的には、ここまで苦いオチではなくても良かったんじゃないかな、って印象を受ける結末でしたね、今回は。
まぁ、今回はその辺のオチの付け方も含めて、あるいは色々と難しい点も少なく無いかとは思いますが、出来れば次回作ではもうちょっと甘めのオチで、そして恐竜らしさってヤツをより前面に出した作品に仕上げてくれると嬉しいですねー……などと、あるかどうかも分からない次回作に勝手に期待を抱いてみたりして(^^;


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