リプレイ感想の追記(ネタバレ含む)

昨日の書評でも扱ったんですが、今日の日中、矢野俊策氏の「ダブルクロス・リプレイ・オリジン 偽りの仮面」を読み返していたら、色々と追加で書きたいこととかが出て来たので、本来の書評としては変則的ですが(汗)、今日はその辺について書いてみようと思います。
ちなみに、以下(「続きを読む」)はネタバレもアリアリでの感想・個人的見解になりますので、例によって、作品を未読の方はこの先はご遠慮頂けますよう、よろしくお願い致します。









さてさて。それでは以下は、既に作品を読み終えた方向けというのが前提での文章になるんですが。
今回このリプレイを読んでいて、GMのマスタリングのやり方として非常に参考になった・感心させられた点として、プレイヤーの発言の上手な拾い方や、それに伴う形で行われる、プレイヤー自らが状況描写を積極的に行えるような雰囲気作りというのもあったんですが、私がそれ以上に感心させられた点として、第2話での、ストーリーの締め方・事件解決の手段の多様性というものがありました。


これは個人的な見解なのですが、これまでに発表された「ダブルクロス」作品(リプレイやシナリオ)のストーリーの多くは、どれだけPCが足掻こうとも、最終的にはGMが提示したシナリオ通りのエンディング・解決方法にしか行き着かない設定になっており、PCの立場に立ってシナリオを見た・読んだ場合には、その「所詮全てはお釈迦様(GM)の手の平の上での出来事」といった感覚に、若干の不満、あるいは、妙な虚無感や脱力感を覚える内容のものが少なくなかったように思います。
しかし今回のリプレイでは、第2話で楠森七緒を止める手段に関して、GMがPCたちに事件の解決方法として提示した、「諦める」「街から逃げる」「七緒を殺す」という、どれを選んでもアンハッピーエンドにしか行き着かないであろう選択肢以外の行動、「“牧村早人”は死んでいるという現実を示す」という解決方法が取られており、これはある意味、ダブルクロスのシナリオのあり方そのものに一石を投じる出来事であるように感じました。


勿論、ただ単にPC・プレイヤーたちに提示しなかっただけで、あるいはこの解決方法もまた、GMが事前に用意した選択肢の1つに過ぎなかったのかも知れませんし、これが完全なハッピーエンドに繋がる選択かと問われれば、高崎隼人は“牧村早人”という過去を失い、憧れの日常を得ることも結局は出来なかったということを考えれば、これもまた“悲劇的なエンディング”であることに間違いはないでしょう。
しかし、たとえそれが“悲劇的なエンディング”であることに代わり無かろうとも、GMが提示した安易な解決方法を選ぶのではなく、自分達で解決方法を考え出し、そして楠森七緒を殺さずに止めることが出来たというのは、大いに賞賛されるべき結末であり、そして何よりもプレイヤーにとって、大いに達成感を得られる結末だったのではないでしょうか。


過去に、イラストレーターにしてゲームデザイナーでもある井上純弌氏が、「RPGマガジン」(確か「天羅万象」の記事だったと思う)において、この“アンハッピーエンドしかないシナリオ”に関するコラムを書いているのですが、そこで書かれていた意見と同様に、私も“アンハッピーエンドしかないシナリオ”は決して良いシナリオ・良いマスタリングでは無いと思っております。
それが真実か否かはさておかせて頂きますが(汗)、TRPGの魅力の1つとしてよく挙げられるものに、「GMとプレイヤーが協力して物語を作り上げる楽しさ」というものがあることを考えると、この“アンハッピーエンドしかないシナリオ”というのは、その楽しさをプレイヤーに提供しない、いわゆる吟遊詩人GMや一本道シナリオといった呼び方・蔑称で非難されるシナリオの典型例の1つだと言えるでしょう。
勿論、吟遊詩人GMや一本道シナリオの中にも、プレイしていて楽しい作品があることまでは否定しませんし、ダブルクロスというシステムや世界観は、むしろそういったシナリオを楽しむ作品であると考えることも出来ます。
しかし、今回ゲームデザイナーである矢野氏自らが提示したこのシナリオの解決方法というのは、ダブルクロスという作品では悲劇しか描かれないと思い込んでいたTRPGゲーマーたちに、新たな作品の楽しみ方やシナリオのあり方を考えさせる、画期的な内容であったように私には思えました。




……と、ここまで長々と見解を述べてきましたが。うーん……ここまで堅苦しい口調での文章を書き過ぎたからか、何だか上手く話がまとまらなくなってしまった……(汗)。
まぁ、何つーの? これは自分も含めてだけど、「ダブルクロス」のシナリオといえば、“奇妙な事件・オーヴァードの犯行と思われる状況・悲劇的な犯人”といったものがそろっていれば、オチはアンハッピーエンド1つだけで十分だと思っていたGMの方々は、これを機に、エンディングや事件解決のアプローチの多様性ってヤツを考えてみる必要があるんじゃないでしょうか……ってコトっすよ、つまりは(苦笑)。


あーぁ。それにしても、こんな文章書いてたら、何だか一層TRPGがしたくなってきたわー(^^; 夏になると結構コンベンションも増えるみたいだし、本気でどれかに参加してみるかなー。