そして今日も今日とて

恒例の感想を書いた後は、昨日の雪が残っていた & それで道路が凍結していて出歩くのも億劫だったというコトで、結局は今日も、昨日に引き続いて家に引き篭もってしまったり(--;
うーむ……我ながら、これじゃあアカンとは思うんですけどねー。ただ、何しろ住んでいるのがド田舎なもんで、何をするにしても、車か電車に乗らないことには何処にも行けない上に、電車の駅すら家から遠いもんで、ついつい出不精になっちまうのよねー……。いやはや、もうちょっとどーにかせんとなぁ、自分。


……と、まぁそんな微妙にネガティヴなプライベートの話はさておきまして。
えーと、とりあえず引き篭もっていたということで、昨日に引き続き、今日も書評の更新でもしてみようかと思ったり。ってコトで、本日はコチラ、グループSNEの方々が著者となっているソード・ワールドRPGリプレイ・アンソロジー、「デーモン・アゲイン」 を取り上げてみようかと思いまっす。ソード・ワールドRPGリプレイ・アンソロジー デーモン・アゲイン (富士見ドラゴン・ブック)

時代と共に変わるものと変わらないもの、その輝きをご照覧あれ

TRPGボードゲームを専門的に扱う雑誌 「Roll&Role」。以前にそこに掲載された、3人の異なるGM (兼筆者) が織り成す3つのシナリオ・リプレイを一冊の本にまとめたのが、この作品ということになるんですが。
いやー……まぁ、TRPGとかリプレイとかをある程度知っている方にとっては、こんなのは重々ご承知というか、分かりきったことかとは思うんですが。使っているシステム・ルールはいずれもソード・ワールドということで、世界観等は同じものであるハズなのに、異なるGM・書き手が紡いだ物語をこーして3つ並べて比べ読んでみると、それぞれのマスタリングの特色とか文章の特徴ってのがよく分かりますねー。
「どれが一番良いか」 みたいなコトに関しては、読み手一人ひとりのそれぞれの好みってのもあるでしょうし、一概には言えないかとは思うんですが、でもこーして読んでみると、それぞれのシナリオにそれぞれの特色みたいなものが出ていて、TRPGをやる身としては、同じ一つのシステムでも多種多様な雰囲気のシナリオが作れるんだなぁ、と改めて実感させられましたねー。
……もっとも、シナリオの雰囲気が違うのには、GMが違うだけではなく、プレーヤーが違うってのも大きく影響してるかとは思うんですけどね (特に、バブリーズ再来の 「デーモン・アゲイン」 )。


まぁ、そんなゲーマー的・GM的な視点は一先ずさておいて、書評らしく(苦笑)、もうちょっと “読み物” としての視点で3つの収録作品を見ていきますと。
まずは、3人の筆者の中では中堅GMに当たるであろう秋田みやび先生による、「やっぱり、猫は好き」 についてですが。
んー……あるいはこれは、読者に向けての配慮と言うよりは、参加プレイヤーの中にTRPG初体験という方が含まれていることへの配慮によるものなのかも知れませんが、シナリオの題材を、如何にも 「剣と魔法のファンタジー」 一色にしてしまうのではなく、そこに “アレルギー” という身近な要素を入れることで、TRPGをよく知らない読者、あるいはファンタジーというものに詳しくない読者が読んでも楽しめる作品に仕上げているというのは、実に見事であると思いましたねー。
っつーか、以下は完全に私見なんですが、この秋田先生の書くリプレイって、その内容・シナリオがどれだけシステム的に突っ込んだ感じのある敵とかアイテムとかが出て来るものになっていたとしても、それでも何処かには、現実世界の読者にとって身近な要素 (たとえば今回ならばアレルギー) ってヤツが含まれているものになっていることが多いんですよねー。
そして、そういった身近な要素が多分に含まれているからこそ、多少なりともTRPGやリプレイってヤツに興味を持ってさえいてくれれば、実際にTRPGで遊んだ経験の有無を問わず、この作品を楽しんで読むことが出来るであろうと思えると共に、同じリプレイを3編並べるにしても、こーいう読み易い展開のものが一本でも入っているってのは、本の構成的にも非常に好感が持てるカンジでした。……まぁこれには、単に私が秋田先生の書くリプレイが結構性に合う・読むのが好きっていう個人の好みの問題もありますけどね(^^;
また、真打ちは最後に登場という意味もあるのでしょうが、バブリーズが登場するこの本の表題作 「デーモン・アゲイン」 ではなく、それよりももっと気軽に読める内容・ストーリー展開であるこの作品を敢えて最初に持って来ていることで、この本をTRPGをよく知らない人にもオススメしやすい = それだけ売り上げが伸びやすいであろうと思わせる辺り、なかなかに編集部も商売上手やなー、とも思ったり(笑)。


そして続いては、3人の中では正に初心者GMに当たる、藤澤さなえ先生による 「冷気の杖を奪っちゃえ!」 についてですが。
むー……まぁ、またまたこれは私の私見やら好みやらの問題となってしまうかとは思うんですが、今度は、秋田先生よりもGM経験が浅い藤澤先生がGMを務めた作品ということで、シナリオの出来が云々とかよりも、初心者GMがベテランを含むプレイヤー達に対してどのような対応・マスタリングをしていくかを見て楽しむ作品になっているとは思うんですが……どーにも、個人的には今一つ諸手を挙げて面白いとは絶賛できないカンジでしたねー……。
もっとも、これには私が何となくこの藤澤先生の文章が性に合わない・何となく読み辛いように感じるという個人的な事情(苦笑)ってヤツが入って来ているので、そーいう点を抜きにすれば、シナリオの内容・話の展開的には、極端に捻った要素や読者にとって身近な要素というヤツこそやや不足しているものの、如何にも初心者GMが作りそうな話ってコトで、これからTRPGを始める、あるいはTRPGを知ったばかりだという方にとっては、単なる読み物として以上に楽しめるものになっているかも知れませんねー。


そしてそして、最後は遂に真打ち登場と言うことで、ベテランGM清松みゆき氏が、これまたベテランなプレイヤーを相手に紡いだ物語、「デーモン・アゲイン」 となるワケなんですが。
いやー……はっきり言って、この作品はかーなーりアクが強いですねー(笑)。というのは、まずプレイヤー及びそのPCからして、既に過去に文庫本4冊ものリプレイをこなしてきた面々ということで、前の2作品とは異なり、とにかく言動が狡猾で (もっとも、それは主にアーチーとスイフリーの2人によるものなんですけどね/苦笑)。
そして、それだけ過去にリプレイをこなして来たということで、PCのレベルも非常に高く、オマケに所持金的にも非常に裕福な為、戦闘に限らずありとあらゆる作戦や調査が滅茶苦茶派手でしてねー。良くも悪くも、見ててとにかく派手 & 爽快ってなカンジでしたよ(^^;
前の2作品が 「自分達もこういう物語をTRPGで紡ぎたい」 と思わせる作品だとするならば、こちらは完全に 「読み物として楽しむ作品」 と言えるでしょうか。以前に “バブリーズ” のリプレイを楽しく読んでいたという方、あるいは、狐と狸の化かし合いのように展開する派手なリプレイが読みたいという方は、このリプレイ一本の為だけでも、この本を買う価値はあると思いますよー。




……と、まぁそんなこんなで、収録されているリプレイ3本それぞれについて触れてみましたが。
好みのGM・書き手の作品が複数入った通常の形式でのリプレイ本に比べると、複数の書き手のそれぞれのカラーが出た作品が読めるというのが面白くもある反面、あまり好みでは無かったりする作品にも金を払わなければならないということで、一長一短があるという印象は否めないかとは思いますが、“今” と “ 昔” それぞれの時代のリプレイの特色を知るという意味では、リプレイ本というものが好きな方なら買って損は無いだろうと思われるこの一冊。
あるいは、これからソード・ワールドのリプレイに手を出してみようという方にとっても、この3人の書き手のリプレイは、現在は少し探せば他の本も買えるようになっているので、まずはこの本で3人の特色を見て、その中でそれが一番自分の好みかを調べた上で他の本を買い求める、なんてのもアリかと思いますよー。


→ 合計:077冊(小説33冊 / 漫画32冊 / その他12冊)