で、引き篭もってたからには

書評の一つも書きますかねぇ、というワケで。本日は、先日再読したらなかなかに面白かった作品というコトで、桜坂洋氏の作品、「スラムオンライン」 を取り上げてみようかと思いまっす。スラムオンライン (ハヤカワ文庫 JA (800))

貴方が本当に欲しい称号とは何なのか

大学という、それまでの “学校” での生活に比べあまりにも自由過ぎる世界。そしてそこに入りたての、あまり人付き合いが得意ではない人間ならば、恐らく誰しもが覚えるであろう違和感、自分が世界と上手く折り合いを付けれていないというような感覚。
そして、そんな違和感を抱えたまま、その違和感を忘れようとするかのように、オンライン対戦格闘ゲーム <バーサス・タウン> に熱中しそこで最強の座を目指す一方で、大学で知り合った女の子・布美子との間では、ズルズルと曖昧な関係を続ける日々。
そんな、大学生として・青春する若者としての現実と、ネットゲーム世界という最も現代風で分かり易いバーチャルな世界という、如何にもな2つの世界の間に揺れながら、それでも自らの生き様・スタンスってヤツを見出していく主人公の物語。


……ってのが、大雑把なこの作品の説明なワケなんですが。
いやー……何と言いましょうか、一昔前に、いわゆる格ゲーにハマった世代的には、非常にクリティカルな作品でしたねー、コレ(^^;
ゲームが好きな人間ならば、誰しも必ず一度は考えるであろう問い、「何故自分はゲームをするのか?」。そして、ゲームをする自分と現実世界に生きる自分との違い・異なるペルソナの存在に気付いた時に生じるであろう更なる問い、「自分はどんな人間になりたいのか」。


まぁこんな問いは、別に必ずしもゲームにハマったコトのある人間に限らず、青春時代には誰もが一度は通る道であろうとは思うんですけどね。
ただ、青春小説としては普遍であろうと思われるそんなテーマを、対戦格闘ゲームという、修行をすれば (ゲームに時間を費やせば) その分だけ腕が上がる世界という要素と、恋愛という、青春時代の人間関係の中でかなりのウェイトを締める要素という、この2つの如何にも現代的な要素を使って鮮やかに描き出しているってのがこの作品の見事なところでして。
あまり詳しく書くと色々とネタバレというか、この作品の山場みたいなものを崩してしまいかねないので、これ以上この点に関して書くのは控えておきますが、とにかくこの作品、一見、流行のオンラインゲームと恋愛と言う如何にも “売れ筋” な要素をぶち込んだだけの作品に見えるかも知れませんが、実際には、青春小説としてはかなり王道を行っていると思えましたよー。


まぁそんなこんなで、とりあえず総括的には、今でも昔でも、一度はゲームにハマったことがあり、尚且つ、自分が何故ゲームをするのかといった問いや、あるいは、自分にとっての趣味や人付き合いとは何なのかということに悩んだことがある、もしくはこれから悩むであろう予定がある(笑)人には是非ともオススメなこの作品。
また、これは既に前述しましたが、一見したところでは随分と軽いカンジのラノベにしか見えないかも知れませんが、じっくり読むと内容的にはかなり青春しているってコトで、個人的には読み応えもそれなりにあるように思いましたので、あまりヘビーな内容やテーマの作品はキツイけど、あまりライト過ぎないそこそこの作品が読みたい、なんて気分の時にもオススメ出来るかと思いましたねー。
あぁ、あと、何だか表紙のイラストからして既に軽く “狙ってる(苦笑)” 的な印象があるかと思いますが、主人公の坂上悦郎が大学で知り合った女の子・布美子はある意味 “萌え” 系なキャラクターかと思います(笑)ので、比較的朴念仁気味な主人公が特に何もしないのにそーいう女の子に憎からず思われるような小説ってヤツが好きな人にもオススメですよー(^^;


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