ダラダラと過ごすついでに

この間の更新の時にもチラリと書いたんですが、先日、天野こずえ先生の 「ARIA」 の最新刊を購入して読んでいたら、ふと急に天野先生の以前の作品である 「クレセントノイズ」 が読みたくなりまして。
で。今日一日、日がなダラダラとするついでにと、それら本棚の奥から引っ張り出して読んでいたら、つい興が乗ってしまいそのままぶっ通しで全巻読んでしまった(苦笑)ってコトで、本日は書評として、この 「クレセントノイズ」全6巻でも取り上げてみようかと思いまーす。クレセントノイズ 5 (ガンガンファンタジーコミックス)

汝が心が奏でる音よ、今こそ世界に響け

人の心が奏でる音を聞くことが出来、そして聞くだけではなく自らが発するその音を引き出し操ることで、超常的な力・“琴咒”を使うことが出来る異能者の集団、「玲微名の一族」。
期せずして自らが持つこの力の存在を知った高校生・羽崎拓は、同じ高校に通う他の 「玲微名の一族」 の面々と共に、この“琴咒”に似た力を操り、そして人の弱みや願いに付け込んで命を狙う異世界よりの使者、「振夜の来訪者」 たちとの戦いに巻き込まれて行く……!



……というのが、まぁ大雑把なこの作品の設定なんですが。
こーして改めて書いてみると、ある意味見事なまでに “異能力者モノ”・“現代伝奇アクション作品”ってカンジの設定ですねー、この作品。しかし、だからと言ってありきたりな作品に過ぎないのかと言うと、決してそれだけでは無いのも事実でして。


正直な所、絵の良し悪しについては、今の 「ARIA」 のような天野先生の絵柄に慣れている方にとっては、純粋に数年前の絵柄ということもありますが、恐らくそれ以上に、「ARIA」 とも 「浪漫倶楽部」 のような作品とも違う雰囲気の作品ってコトで意図的に絵柄を変えようとしているのか、やや雰囲気が違う・アクションシーンとかの迫力で一部物足りなく感じてしまうようなシーンもあったりはします。
しかしその一方で、“琴咒”の力を持たない一般の人たちが心の弱みを見せ、そこを 「振夜の来訪者」 に付け込まれるシーン等については、やはり心理描写やそれに伴う情景描写が巧みな天野先生だけあって、普通のアクション系の漫画とは一線を画す出来になっているように思えましたねー。


あとは、個人的に設定の面で面白いと思ったものに、まぁこれは最終巻あたりにならないと明かされないネタではあるんですが(汗)、人の心の弱さに付け込む 「振夜の来訪者」 たちの正体、並びにそれに敵対する 「玲微名の一族」 の正体ってのがあったり。
まぁ、こういう伝奇系の作品等を多く読んでいる人にとっては、さほど驚くべき程の設定・正体では無いかとは思うんですけどね(苦笑)。それでも、そういった要素を上手に真正面から料理し、そして、設定重視の頭でっかちなだけの作品ではなく、キッチリとテーマ性やエンターテイメント性を十分に持った作品に仕上げているあたりは、読んでてかなり楽しめました。
……でもその反面、最終回というか一区切りというかが近かったからこそ、最終巻でこの設定を明かしたのかも知れませんが、敵味方共に結構魅力的に思える設定・正体であることがようやくここで明らかになったにも関わらず、それを十分に活かしきれないままに終わってしまっているように見えるのは、正直残念なカンジですねー……。
確かに、この設定を明かしてしまうと、これ以上の物語の進展はなかなか難しいのかも知れないんですけどねー。でもだからこそ、それを頑張って乗り越えていく主人公達ってのを、天野先生の魅力ある作風でもっと読んでみたかった、ってのも事実だったり……って、ネタバレを回避しようとする余り、この辺の話ってば作品を読んでない人にとってはサッパリな内容ッスね(汗)。


えーと、まぁそんなこんなで。
一応は全6巻で完結となっているものの、正直内容的には結構未完な部分を残しているこの作品。もっとも、出版がマッグガーデンではなくスクエニな上に、作品自体の人気が特別高いワケでは無い(汗)ってコトで、恐らくこれ以上の続編が描かれるのは難しいであろう作品なんですけどねー……。
それでも、いつもの登場人物たちの心理描写の巧みさのみでなく、更にそれにアクションの要素や伝奇モノの要素までもが織り込まれているという意味では、たとえ未完であろうと、そして人気があろうと無かろうと、個人的には結構オススメなカンジの作品だったりしまして。
まぁ万人に手放しでオススメが出来る作品というワケではありませんが、少しでも興味を持たれた方は、一度読んでみては如何でしょうか。天野先生の作品全体が好きだと言う方であれば、なかなか楽しめるのではないかと思いますよー。
あ、あとTRPGの 「異能使い」 なんかが好きな人にとっては、シナリオに使うにはややワンパターンかも知れませんが、参考資料やイメージ資料としては結構有効かも……とも言ってみたり(^^;


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