ちょっと言い訳なんぞを

えー……小説の書評に関しては、本来ならば、どーせ月末になればまた仕事が忙しくなるんだから、あまり寄り道をせず、100冊クラブの「夏の100冊」の次の課題図書である、「アーモンド入りチョコレートのワルツ」を読む & 書くべきなのかとは思うんですが……。
実は、「恋愛中毒」を読み終えた後、次の指定を貰うまでに多少のタイムラグがあったんで、つい買ってあった「夏休みは命がけ!」に手を付けちゃった & そのまま読了してしまったんですよねー(苦笑)。
まぁ、そんなワケで。折角読み終えたのだし……ってことで、誠に勝手ではありますが、本日の書評では、とみなが貴和先生の、「夏休みは命がけ!」 を取り上げてみようと思いまっす。夏休みは命がけ! (角川スニーカー文庫)

銃弾に追われつつ、今はただ突っ走れっ!

んー……。まぁ、これは巻末の作者あとがきにも書かれていることなんですが、元々はスニーカー文庫のラベルで出されていたというだけあって、この作品は、今回は一般の角川文庫からの発行ではあるものの、内容的には恐らくライトノベルスに分類される類のものであると感じました。
話のあらすじ等については、文庫本の裏表紙 & Amazonの本の紹介ページにも書かれているので省略しますが、ヤクザ・中国マフィア・銃器 & 銃撃戦という要素が盛り込まれ、キャラクターたちが東京という舞台で暴れ回る様は、ややご都合主義的とも思える話の展開や、ハイテンションかつアップテンポなストーリー進行と相まって、いわゆる典型的なラノベという感じに仕上がっているように思います。


……で、以下ちょっと辛口なことを書いてしまいますと。
既に述べたように、銃撃戦や東京でのヤクザに追われながらの人探しなど、多少犯罪モノ・ノワール作品的な要素が織り込まれ、それなりに読んでいて面白い作品に仕上がっているとは思うものの、ラノベ作品としては、少々ありきたりというか、あまり高い評価はしにくい作品となっているように思えました。
皮肉的な物言いをしてしまいますと、確かにあとがきで書かれているような作品テーマは面白い・意味のあるものだとは思うんですが、あとがきを除いて、作品本文だけを読む限りでは、なかなかテーマを理解できないというか、テーマを自分で読み取れるようになるまで熟読するには、ちょっと文章が力不足のように感じてしまったんですよ。
何でそう感じたかは……うーん、文章があまりにもサクサクと読めてしまうからか、あるいは、展開に意外性が今一つ乏しいからか、はたまた、テーマを除くと他のラノベ作品と区別がしにくいような文章・ストーリーだからなのか……。まぁ、勝手に批評をしておいて申し訳ない話ではありますが、ちょっとこの辺りについては自分でも明確な理由が分かりません。
ただ、作品のテーマ自体は、読み手が、スニーカー文庫がメインターゲットにしているような思春期の読者だったなら、読後に色々と考えたり共感したりも出来るようなテーマなのでは……と思えるテーマだっただけに、文章の魅せる力・読ませる力が今一つだったのがつくづく残念。


まぁ、とは言っても、事件が一日の内に発生・収束するということもあってか、ハイテンションを保ったまま流れるように展開するストーリーなんかは、読み易さという点ではかなり高く評価できるのも事実でして。登場人物のセリフに、時折如何にも説明的なセリフが混じっていたりするのも、多少は気にはなるものの、このスピード重視のようなラノベ的な展開を補足という意味においては、なかなか効果的な手法と言えるかも知れませんねー。
あと、これもラノベ的といえばラノベ的なのかも知れませんが、キャラクター描写についてはかなり丁寧に書かれており、五郎丸の思春期特有の複雑な心の機微や、それに伴う、暴力的・自己破滅的な言動の描写などはなかなかのものに仕上がっていて、その辺りの部分に関しては、かなり読み応えがあるように思いました。
また、それと対比するかのような、主人公・瓜生の意志の弱さや周囲に流されるままのような言動、そしてそれに混じって時折見せる微妙な計算高さについても、こちらはこちらで、如何にも思春期の少年って感じが出ていて良かったですねー。何より、その微妙な情けなさがあるからこそ、五郎丸を必死になって説得するシーンでの、彼の必死の言動が実に効果的というか、一念発起した彼を実に魅力的に見せてくれるワケでもあるんですが……まぁ、この辺は読んでからのお楽しみということで。


総評的なコメントとしては、良くも悪くも、本の裏表紙に書かれた文章の雰囲気そのままにストーリーが展開するこの作品。
はまぞう」やAmazonの画像データは古いままのようですが、今年の夏の100冊に選ばれ、普通の角川文庫からリニューアルデビューもなされたことですし、あらすじ紹介の文章にピンと来るものがあった人は、これも何かの縁ってコトで(苦笑)、一度読んでみるのも悪くは無いんじゃないでしょうか。


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