ちと入手しにくいんだけど

先日まで友人に貸していた、小説雑誌「ファウスト vol.1〜3」が返ってきたので、昨日からちまちまと読んでいまして。
で、読んでいるうちに是非書評を書いておきたいと思う作品があったので & 上の武装錬金の感想で頭を使い過ぎたらしく、あんまり長い作品の書評を書く気が起きない(苦笑)ので、今回は「ファウスト Vol.3 2004.Summer (講談社 Mook)ファウスト Vol.3 2004.Summer (講談社 Mook)」収録作品より、西尾維新氏の「零崎軋識の人間ノック」を取り上げてみたいと思います。

武器だけなら一番キワモノだよな、この人

登場キャラや世界観としては、<戯言シリーズ>のエピソード1つということになるこの作品なんですが、主人公はいーちゃんではなく、零崎一賊の一人で、“愚神礼賛(シームレスバイアス)”という通り名、そして愛用する武器が釘バットであるという情報だけが以前よりシリーズ読者に知られていた人物、零崎軋識という男が主人公となっています。
そんなワケで、文体もいつもの一人称ではなく三人称となっており、また<戯言シリーズ>とはいえミステリの要素が入ってないあたり、雰囲気としては、同じくいつものシリーズの外伝にあたる「零崎双識の人間試験」に近いかと思われます。
まぁいくらミステリの要素が入っていないとはいえ、それなりにストーリーの展開というものはあるのであまり詳しく書くのは嫌なんだけど、全体の印象としては、「零崎双識の人間試験」と同じく、“西尾氏が書いたライトノベルス”ってカンジですねー。
読み切り短編ということでページが少ないからか、血生臭さはそこそこ抑えられているものの、それなりに残酷な描写は存在するし、心理的な描写というか、戯言的な表現は残っているので、西尾氏作品のそういう要素が嫌いじゃない人であれば、なかなか楽しく読めるんじゃないでしょうか。


そして、私がこの作品を是非書評で取り上げておきたかった最大の理由が、この作品における時代設定が、“零崎人識が中学生だった頃”ということになっている点にあります。……いや、「中学生の人識って可愛いー♪」とかショタなこと言う気は無いッスよ?(汗)
実は時間軸の設定がこの時代だと、いーちゃんや玖渚友といった主役級の面々が(まだ秘められているけど、本編で匂わされている複雑な過去ってヤツのせいで)登場できない反面、もはや本編には登場しない・できないであろうキャラが堂々と表に出て来れるんですよねー。だから、ある意味夢の対戦みたいなものが行われたりもするワケで。
……とは言うものの、本作品で行われている夢の対戦は、あんまり凄いものじゃないんですよねー。結末もちと物足りないカンジだし、対戦カード自体も、これまで本編で張られている伏線とは微妙に違うし。
一応、この夢の対戦とは別の部分で、本編で張られていた伏線の1つというか、謎の1つが解消されているけど……西尾氏としては、また別の機会に発表するつもりなのかも知れないけど、どーせ“愚神礼賛”を出したなら、本編で伏線が張られて以来ずっと私が気になっている、彼と“自殺志願”、そして他の面々を向こうに回して戦ったという“あの人”のエピソードを書いて欲しかったなー。


……上の文章、この作品を未読の方にとっては、はっきり言って訳が分からない文章と化してますな(苦笑)。でも、ネタバレを避けつつ自分が書きたいことを書こうとすると、こういう曖昧な表現しか出来なくなっちゃうんですよねー。いや、勿論それは私の文章力が至らないからなんだけどさ。
ただ、この作品が発表されたということは、もしかしたら西尾氏は、上記の私が読みたい伏線・エピソードも含めて、他の伏線絡みの話をそのうち発表してくれるのかなー……などと期待しちゃったりもするワケで。
今回、思いきって時間軸を過去にずらすことで、もはや本編には登場しないキャラクターが登場する作品を書く可能性を示唆してくれた西尾氏。個人的には、本編「ネコソギラジカル」の続きも気になるけど、こーゆーエピソード・外伝的な話も期待したいところです。