ここの所、すっかりサボってたけど

武装錬金の感想ばかりでなく、たまには小説の感想も書かないとなー(^^;
と、ゆーワケで。本日は豪華2本立てというカンジで、小説の書評も書いてみることにします。ちなみに取り上げる本は、何とかの一つ覚えと言われそうだけど(苦笑)、<戯言シリーズ>より、「零崎双識の人間試験 (講談社ノベルス)零崎双識の人間試験 (講談社ノベルス)」でっす。

正に“外伝”ってカンジかしら

前回取り上げた作品が「サイコロジカル」なんだから、本来の流れからすれば、無難に「ヒトクイマジカル」を取り上げるべきなんだろうけど……あれって、通勤電車の中で読むには、物理的に重くてしんどいんだよねー(^^;
同じ新書サイズであっても、こっちの「零崎双識の人間試験」なら、片手で持って読むのも苦じゃないし。まぁそんな私的な事情もあって、本日はこちらの書評とさせて頂きました。


まず始めに登場人物についてですが、この作品にいーちゃんの出番はありません。よって、当然文体も一人称ではなく普通の三人称で書かれており、いーちゃんの代わりにこの物語にメインで出て来るのは、零崎双識なる、零崎人識の兄貴分な人なんだけど……これがまた、実にイイ感じに壊れてて良いですなー(笑)。
いや、いーちゃんや零崎人識、あるいは玖渚友みたいな、徹頭徹尾に壊れてる面々に比べれば随分マシなんだけど、それでもやはり零崎一賊の一人だけあって、人殺しという行為や殺人鬼である自身のスタンスに独自の哲学を持つなど、実に血生臭い壊れ方をしてますね。
ただ、それでいて自身はそんな血生臭い生き方を嫌い、無個性で普通な人生に憧れている辺り、最近のライトノベルスにおける“キャラ立ち”という意味では凡百かも知れないものの、西尾氏独自の誰もが壊れているような世界においては、なかなかに味のあるキャラに仕上がっているのも事実なワケで。零崎人識が気に入った人にとっては、この零崎双識も結構魅力的なキャラに思えるのではないでしょうか。


また、他の戯言シリーズ作品との大きな違いとして、ミステリの要素が一切含まれていない点が挙げられる本作品。いつもの作品を“TVシリーズ”と捉えるならば、そこでは放送しきれない作品の魅力を伝えるという意味で、本作品は“外伝”、あるいは“劇場版”とでも捉えてもらうと良いでしょう。
しかし、その魅力を伝えるための手段として、ミステリとしての要素をばっさり切り捨ててしまっているので、“ミステリとしての西尾氏作品”を好む人にとってはあまり面白い作品では無いでしょうし、ミステリ以外の部分の魅力の強調ということで、戯言的な表現も増えているものの、それと同時に、良くも悪くもライトノベルス的な派手な戦闘シーンの描写に力が入っており、その描写が延々続いたり、血生臭い・痛々しい表現が多々あったりするので、たとえ<戯言シリーズ>好きの方であったとしても、そういった文章を嫌う人には、正直あまりオススメは出来ません。
しかしその反面、西尾氏の作品にあまりミステリの要素を求めておらず、むしろライトノベルス作家としての西尾氏を好む人にとっては、血生臭いのが嫌いでなければ、いーちゃんによる一人語りという制約に縛られておらず、尚且つ、零崎双識や零崎人識といった魅力的なキャラクターが大立ち回りを繰り広げるということで、下手をすれば本編以上に楽しめるのではないでしょうか。
なお、本作品は以前にWebで連載されていたものを単行本にまとめたものだということで、Web掲載分を読んでいた人の中には、わざわざ金を払ってまで同じ内容のものを買わなくても……という人もいるかも知れませんが、加筆されている部分の中には、早蕨兄弟の一人ととある人物との興味深い会話なんかも織り込まれており、既にWebで読んだ人にとっても、なかなか面白い一冊だと思いますよ。