まぁ、予告通りに

小説の書評を書いている時間が無かった(っつーか気疲れで書く気になれなかった)ので、予告通り漫画の感想なんぞを。
本日取り上げる作品はコチラ、堤芳貞氏の作品で「シーラカンスデイズ (ヤングキングコミックス)シーラカンスデイズ (ヤングキングコミックス)」です。

そーいえば、博物館って久しく行ってないなー

表題作である「シーラカンスデイズ」①&②を始め、ファンタジー色の強い作品から現代青春モノまで、結構ごちゃ混ぜで(失礼)7つの作品が収録された作品集である本書。
Amazonで表紙の絵が出てくれない(汗)んで、ちと説明しにくい部分はあるんだけど、絵のタッチについては、やや荒っぽいカンジで人によっては好き嫌いが分かれるカンジかも。感覚的には、前回取り上げた「竹易てあし漫画全集 おひっこし (アフタヌーンKC)」とかに近いかなー。あれよりは、もうちょっと薄味・スッキリした描き込みだけど。


まぁ絵の話はこれくらいでさておき、作品の内容についてですが。いやぁ……個人的には、めっちゃ好みなんだよねーこの作品集(^^;
表題作である「シーラカンスデイズ」も、テーマとしては、一般的には見る者に夢を与える存在である博物館や化石の、とあるリアルな一側面を描き出しており、非常に現実的でシビアな話であるように一度は思わせつつも、それでいて、その化石の記憶がホログラム(幻)となって宙を舞うシーンが違和感無く描写として織り込まれており、事態や状況全てを描ききってしまわない堤氏の作風の良さが現れてるカンジです。
でも、それ以上に個人的に気に入ってるのは、「7時のニュース」と「キティホーク標本(サンプル)No.2」っすねー。前者は、テレビや電話など、“目に見えない・感じられない”世界の広さとか遠さとかが上手く表されてて、堤氏の作風との相性が抜群にイイ感じ。ついつい何度も読み返したくなるってヤツかも。


そしてこの作品集の中でイチオシなのが、「キティホーク標本No.2」! 読み切りの短編としては、世界観も分かりにくいし、テーマもイマイチ理解しにくいカンジで、そーいう意味からすれば、決して読み手に優しい作品では無いよーな気もします。
けどねー……。何っつーか、やっぱり男にはあるワケですよ、捨てられないコダワリってヤツが! 別にそれで何がしたいってワケではないのに、少しでも高い空を飛びたいとか、少しでも良い作品を作りたいっつーコダワリってヤツが!
そして、そんな不器用な生き方しか出来ない奴らの生き様ってヤツをかなり真正面気味に描いたこの作品。絵のタッチや作風との相性からしてみると、もしかしたら、女子供はものごっつい勢いで置いてきぼり & かなり理解不能な作品かも知れないけど、個人的にはマジにクリーンヒットでした。っつーか、この1作だけで単行本を買った価値があったかなーみたいな。


少年画報社が出版元ということもあってか、普通に漫画を読む程度の人への知名度は致命的に低い上に、どーやらヲタクの間でも知名度は低いらしく、Googleの検索とかでもヒット数が上がらないこの一冊。……ただ単に人気が無いだけ、とか言っちゃ嫌よ(汗)。
3年近く前の出版なんで、なかなか本屋とかで見る機会は無い上に、発行部数の問題からか古本屋などで見掛けることも少ないかも知れないけど、機会があればぜひ一度読んでみて下さいな。ホント、良作揃いの一冊なんで。
それと今日は最後に、「キティホーク標本(サンプル)No.2」の中の台詞の1つで、最初に読んだ時に思わず鳥肌が立った台詞を引用してみたり。

「…なぁ 聞いたことあるか?
 肩甲骨って羽の名残りだって話
 下んねェと思う?」
堤芳貞  「キティホーク標本No.2」(シーラカンスデイズ (ヤングキングコミックス)収録)より