半ば惰性な気もするけど

何となく書かないと落ち着かない気もするので、今日も今日とて書評を書いてみる。
っつーかコレって、人に読ませるためのモノというよりは、これまでに自分が何を読んで、何を思って、読み返す時には何に気を付ければ良いかのメモだよなー。まぁ、イイか。

『この書評の執筆において、動物から危害を受けた覚えはありません』……当たり前だ

本日の作品はコチラ、伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)」っす。
……“書評”と大きなカテゴリを作ってるワリには、取り上げてるのが伊坂幸太郎さんの作品ばっかりな気がしますが(苦笑)。まぁ、現時点でのマイブームなんでご容赦下さいな。


うーん……。何て言えば良いんだろ。
多分、一昨日取り上げた伊坂さんのデビュー作「オーデュボンの祈り (新潮文庫)」に比べたら、かなり作品の質は上がってると思う。描写とかも、一層読者を惹きつける魅力溢れたものになってると思うし、一見リアルで、それでいて背筋が寒くなるような残虐さが秘められている作中の世界観も、ミステリやサスペンス好きの読者を惹きつけるものになってることは間違いないと思う。
けどねー……。ホントに特筆するような理由なんか何一つ無いんだけど、ただ何となくで、個人的にはこの作品、心の底から面白かったとは言い難いカンジっす。
ややネタバレかも知れないけど、もしかしたらそれは、私の物語の好みが基本的にハッピーエンド好きなんで、そーいう意味で、完全にはハッピーエンドとは言い難い結末が好みじゃないだけかも知れないんだけど……何となく、それだけじゃない気もするんだよなー。


……と、ここまで不満ばかり述べてしまったけど、この作品、凄い魅力的なポイントをいくつも持っているのも事実だったり。
脇役なんだけど、ペットショップの店長である麗子さんとか、猫のシッポサキマルマリとかは、話の登場人物として実に魅力的なカンジだし、物語が二年前の描写と現在の描写が交互に描かれることで進んで行くというのも、手法そのものはオーソドックスかも知れないものの、この物語を実に魅力的に仕上げてくれてるやーねー。
そして個人的に一番のオススメなのが、コインロッカーとボブ・ディランの関係(笑)。 ネタバレになるので詳しくは書けないんだけど、冷めた見方をすれば、すごく馬鹿馬鹿しいことなんだろうけど、でもそれを実行する本人たちにしてみれば……うん、凄く意味のある行動なんだよな、やっぱり。
っていうか、こんなに魅力ある行動をキャラクターたちに取らせることのできる、伊坂幸太郎さんの発想の凄さに脱帽ってカンジ(笑)。 私個人としては、このコインロッカーの部分だけで、この本を読んだ甲斐があったかも。


これは伊坂さんの他の作品にも共通してることなんだけど、この人の作品って、どれも根底の部分に何かとても暗いものが流れてて、それでいて、それを意識的には隠そうとしていないってカンジがあるように思えるんだよね。
もしかしたら、それが自分の好みにぴったりとハマった時は非常に面白いと思える半面、それが好みと合わない、あるいは、そこで取り上げられている人間の暗い側面がその時の自分の精神状態に悪い刺激を与えそうな時には、描写とか登場人物とか他の部分で好みの部分が多くあったとしても、どーにも好きになれなくなっちゃうのかなー……などと愚考してみたり。
まぁ、完全なハッピーエンドを迎える話ではないことを踏まえた上で、尚且つ、本屋で立ち読みした時に(苦笑)最初の方の描写が気に入ったのであれば、読んでみて損はしない一冊なんじゃないかなー。

あ、そうそう。前述のコインロッカーもそうだけど、この小説って物語の面白さ以上に、伊坂さん独特の描写とか表現が多く入ってるってのは、結構なポイントかも。
願わくば自分が、「敬遠したいタイプ」の変人ではなく、「怖いもの見たさでしばらく付き合ってみたいタイプ」の変人でありますよーに(^^;