まぁ多少やる気があろうと無かろうと

先週も同じコトを書きましたが、年間100冊というクラブ員的目標達成の為には、ボチボチ真面目に読み進めておく必要があるワケでー(汗)。
というワケで、本日も書評を書いておこうと思うんですが、本日取り上げるのはコチラ、最近この <タイタス・クロウ・サーガ> の長編第1作目も刊行されたブライアン・ラムレイ氏の作品で、クトゥルフ神話をベースにしたオカルト探偵作品 (not ホラー小説) 短編集、「タイタス・クロウの事件簿」 でっす。タイタス・クロウの事件簿 (創元推理文庫)

聖なる者よ、魔の知識を以って魔を祓え

ラヴクラフトらが生み出したクトゥルフ神話の世界観を保ちつつも、そのラヴクラフト本人が描いたような、ただ旧支配者らによる宇宙的な恐怖に翻弄されるだけではなく、自らも魔術の知識を武器に、それらの恐怖的存在に敢然と立ち向かう人間という、謂わば邪神ハンターとしての立場を取るオカルティスト、タイタス・クロウ。そんな彼が、恐るべき邪神そのものとではなく、邪悪な知識を操る者や、あるいは超自然的な存在と奮闘する様を描いた数々の短編を集めたのが、この一冊である。


……というのが、この本に関する大雑把な説明なワケなんですが。
えー……ちなみにこれは、Amazonのカスタマー・レビューを始めとして、この本に関する書評や感想等でよく言われていることではあるんですが。……ぶっちゃけた話、この作品は、一応世界観的にはクトゥルフ神話をベースにしてはいますが、旧支配者や外なる神といった存在らが (少なくともこの短編集に収められている物語には) ほとんど影響を及ぼしていない・姿を見せたりしていないということを差し引いたとしても、この作品は決して、一般的なクトゥルフものの分類である 「ホラー小説」 では無かったりします。
というのは、まぁ私もそれほど多くのクトゥルフ作品を知っているワケではないのであまり大きなコトは言えないんですが(汗)、よくあるクトゥルフ作品における “人間” というのは、大概の場合、旧支配者らやその従僕達の巨大な力に魅入られたり飲み込まれたりした挙句、ほとんど何も為す術がないままに破滅へと向かうか、あるいは破滅を免れたとしても、その状況に翻弄された結果として偶然助かるだけ、みたいなケースが多いんですが……この作品に出て来るオカルティスト、タイタス・クロウ先生の場合は、そういった存在らと対峙しても、ただ状況に翻弄されるのではなく、むしろその魔術に関する知識を武器に、自ら超自然的な存在へと立ち向かって行ってしまうんですよねー、これが(^^;
後にタイタス氏が様々な魔術関連の知識や書物を得るに至る切っ掛けとなった事件でもある、妖術師カーステアズとの対決を描いた 「妖蛆の王」 と、その魔術で以って罪の無い人々を殺めていたカルト集団の教祖との勝負を描いた 「黒の召喚者」 という、正にタイタス氏の邪悪な魔術に対するスタンスが描かれたこの2本の作品を始め、とにかく 「自らも正しく魔術の知識を用いれば、それらの邪悪な魔術的企みにも対抗できる」 的なスタンスというのが、この本に収められた作品全般の特色でして。
旧支配者や外なる神といった、邪神もしくは超存在とでも言うべき存在達にか弱い人間が翻弄されるという、如何にもなクトゥルフ神話的ホラーを読みたいという人にとっては、ハッキリ言ってお勧めしかねる作品ではありますが、逆に、クトゥルフ的なテイストは好きだがあまりにも人間が弱すぎるのは嫌いだとか、TRPGでのクトゥルフ (「クトゥルフの呼び声」とか) のように、ホラーだけではなく多少はオカルト探偵的なテイストの入った作品が読みたいという方にとっては、手放しでオススメが出来る内容になっていると言えるのではないでしょうか。


繰り返しになりますが、いわゆるクトゥルフ神話的なホラーとして読むと期待外れではあるものの、本書に収録されている短編 「海賊の石」 に代表されるような、オカルト探偵が活躍する作品と言う意味では、タイタス氏の適度に活動的で適度に渋いそのキャラクター性も相俟って、なかなかに良い出来となっているように思われるこの作品。
また、これは自分が行く本屋の品揃えが良くない(汗)のか、出版されたのが少し古めの本ということで、もしかしたら多少入手するのは困難かも知れませんが、最近出版された、この短編集の主人公でもあるタイタス・クロウ氏が今度は邪神そのものと対決する、<タイタス・クロウ・サーガ> シリーズの第1作目 「地を穿つ魔 <タイタス・クロウ・サーガ> (創元推理文庫)」(ちなみにこの作品も、クトゥルフ神話を扱っているものの雰囲気はオカルト探偵モノって感じの作風です) を読む上では、確実に押さえておきたい本でもあるので、少しでも興味を持たれた方は、是非とも頑張って探して読んでみるだけの価値はあると思いますよー。


→ 合計:079冊(小説35冊 / 漫画32冊 / その他12冊)