SF熱ってコトで

先日の日記にも書きましたが、何故か今週は、自分の中で “SF熱” みたいなものが発生しておりまして。で、通勤の行き帰りの電車の中で、ちまちまと文庫本を読んでたりしたんですが。
いやー。良い作品に出会うってのは、本当に良いものですなー。結局通勤電車の中だけでは読み終わらず、今日の日中にも続きを読んでいたんですが、ついつい昼食を食べるのも忘れるくらいに没頭してしまいましたよ(^^;
ってコトで。本日の書評では、その私が読むのに没頭してしまった作品で、ロバート・A・ハインライン氏の代表作、「夏への扉」を取り上げてみようと思いまっす。夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

あの扉の向こうに待つのは夏か未来か

とりあえず、あまりネタバレにならない程度にぶっちゃけた話をしますと。
簡単に言ってしまえば、この作品はタイムトラベルものなんですが、そのアイデアが非常にユニークというか、未来へと飛ぶのに、特別な機械でも技術でもなく、ただのコールド・スリープが使われているというのが、設定にばかり凝ったようなSFばかりを読んでいる方にとっては逆に斬新で、思わずニヤリとしてしまうのでは無いでしょうか。
粗筋やらストーリーやらについては、あんまり書いてしまうとネタバレに近付いてしまう・読む楽しみを一つ奪ってしまいかねないということで、今回は省略させて頂きますが、話の途中、主人公のダニイに感情移入しすぎていると、あまりにも悲惨なストーリー展開につい暗くなってしまう箇所もあったりしますが、全体の流れ・オチとしては、タイムトラベルものにしてはすっきりとまとまっていて、尚且つ理不尽なエンディングということもないので、私を含めたSF初心者にもオススメ出来る一冊となっています。


また、ストーリー以外にも、この作品を語る上で外せない魅力的な要素として、作中の近未来の世界(2001年)に出て来る、様々なロボットなどの便利な機械類やそれを用いた生活の描写が挙げられるでしょう。
確かに、現実としての2000年代初頭に生きる今の私たちにしてみれば、ハインライン氏が作中で描いた未来予想図はかなり夢物語に見えますが、この作品が書かれたのが1950年代半ばだということを考えると、ハインライン氏の発想力には舌を巻かざるを得ないと言えるのではないでしょうか。
……ってゆーか、ここは敢えてこの砕けた口調で書かせてもらいますが、とにかく凄いんですよ、作中での未来の描写が。表紙にもどこにもその光景を連想させるようなイラストは無いにも関わらず、文章を追っているうちに、あたかもその未来世界が現実のように思えてくる・ヴィジョンが脳裏に浮かんで来るのだから、とにかく凄いとしか言いようがない。いや、マジで他の言葉が見付からないくらいです(汗)。
あるいは、この喜怒哀楽に満ちたストーリーが一人称で語られる点、そして、ハインライン氏の原文を見事に翻訳した福島正実氏の文章力なんてのも、この作品の評価をより一層高いものにしている要因かも知れませんねー。……それだけに、お二人とも既に他界されているというのは、本当に残念な限りでもあったり。


繰り返しになりますが、確かに現代作品としては古典ではあるものの、魅力的な設定・文章・ストーリー展開が揃っていて間違いなく今の時代でも名作として通じ、そして、過剰に複雑な科学理論や数式なども出て来ないため、SF初心者や根っからの文系人間にも迷うことなくオススメすることが出来るこの作品。
私は以前に読むのにチャレンジして、結局は忙しくて読む時間が取れずに途中で投げてしまった経験があるんですが、改めて読んでみると、ホントに心から楽しむことが出来る一冊でした。
ハヤカワ文庫SFということで、このサイズの本としてはやや字が小さい・他の文庫や新書に慣れていると読みにくく感じるという点こそマイナスに思えるものの、読書をする習慣のある方には、良い作品に触れる機会を一つでも増やすという意味で、SFを好むか否かに関わらず、是非とも手にとって読んでみて頂きたいですねー。
あと、猫好きの方にとっては、SFがどうとかストーリーがどうとかといった点は二の次として、可愛い名脇役であるピーターの活躍ぶりを見るためだけでも、この作品は読む価値がある……とまで言ったら、ちと大袈裟ですかねー?(^^;


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