表紙に惹かれて買ったんだけど

読んでみたら、予想以上に(失礼)面白かった本があったんで、早速書評を書いてみようかと思います。
ちなみにその本ってのはコチラ、ピエール・ペロー氏の作品で、「ジェヴォーダンの獣」でっす。ジェヴォーダンの獣 (ヴィレッジブックス)

ブラボー! あんた、キャプテン・ブラボーだろ!

……というのが、この本の表紙を見た私の正直な最初の感想だったりして(^^;
いや、ホントは「武装錬金」の和月氏がこっちをパクったんだ、ってのは分かるんですけどね。でも、こっちの本を未読 & 映画も未見の自分としては、こーゆー目元まで襟を引き上げたコートといえば、ブラボーの印象の方が強いんだよねーみたいなー(苦笑)。


まぁ、そんな戯言はさておき。映画が結構有名らしいので、ある意味今更ではあるんですが、作品のストーリーはというと。
1764年のフランスの辺境地、ジェヴォーダン。そこは今、女子供ばかりが謎の獣に殺されるという、不気味で恐ろしい事件に苦しめられていた。そんな彼らを救うべく派遣された、博物学者のフロンサックと、彼が渡米していた時期に出会い義兄弟の契りを結んだインディアン・マニ。彼ら2人は懸命に獣の正体を探ろうとするが、そこに様々な人々の思惑が絡み始め、事件は思いもよらぬ展開を見せ始める……といった感じでしょうか。


何でも、映画はその映像の美しさ & 迫力が凄いとのコトですが、この原作の小説を読む限りでは、作品のストーリーについてもなかなかの良作・傑作だと言えるでしょう。
最初はついついフロンサックやマニの派手な立ち回りに目が行ってしまいますが、物語が進むに連れ、ただのアクションストーリー作品では終わらない、様々な立場の人間の様々な思惑が絡み合う様などは、かなり読み応えのある展開、もしくは、どんどん先へ先へと読み進めたくなる展開であると思えました。
また、ラストに近付くに連れて明らかになる事件の真相などは、(この辺、ややネタバレですが)意外性に関しては読み手の知識によって左右される部分はあるものの、この奇妙な事件が起きただけの説得力があると思える展開で、私個人としては、“この(未だに真相が不明の)事件をこう解釈し、エンターテイメントのストーリーとしてこんな風に仕上げたか!”と思わず感嘆の溜息を漏らすほど、非常に楽しめる・面白みのある真相となっていたように思います。


ちなみに、上の文章でもちょっとそのことに触れましたが、この作品のタイトルでもある“ジェヴォーダンの獣”というのは、本当にこの時期のジェヴォーダン地方で起きた、女子供ばかりが獣に殺された実在の事件だそうで。
獣の正体など、現実の事件の真相は、事件発生から2世紀半近くも経った今でも未だに不明なままだそうですが、小説や映画に触れる前からこの事件を知っていた人も知らなかった人も、当時のフランスの状況を反映した事件の真相の解釈ということで、本作品は、単なる読み物としてだけではなく、歴史解釈の一環として読んでも楽しめる作品と言えるでしょう。
ただし、作中には一部、いくつかの倫理に引っかかりそうな展開があったりもするので、その辺が苦手な人・事前に厳重に警戒して避けたい人には、ちとオススメし難いかも知れませんね。その辺だけ気を付けて頂ければ、かなりエンターテイメント性の高い、オススメな作品であることは間違いないですよ−。


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